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東工取は二○○三年度に経産省から二億円の予算を受け、研究は拡充された。
実験経済学で国際的に知られた西条辰義大阪大学教授をリサーチディレクターに任じて研究活動を行うと同時に、コンピュータ取引システムの開発を進める。
公設取引所が国費を使って排出権取引の研究を行う例は初めてで、「日本がこの制度を導入する場合には、東工取が何らかの役割を果たすことは間違いない」(中沢理事長)と期待する。
東工取は、石油や金の商品取引では世界指標となっているニューョーク商業取引所(NYMEX)と、出来高で肩を並べる存在だ。
だが、商品先物取引は株や為替と違って一般になじみが薄い。
そこで、国策の一部であり、一般に関心の高い排出権取引市場を誘致することで、社会的な存在感を高めようとの狙いもある。
新たに生まれたビジネスだけではない。
日本経済を担ってきた既存の企業も、京都議定書をにらんで行動を始めた。
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毎年詳細な環境リポートを出しているが、二○○二年度版からリポートに環境保全効果で金額的にどの程度、社会や顧客にメリットとなったかを発表するようになった。
その中で、二○○一年度のCO2の削減効果を金額にして公表した。
それによると、同年度には環境保全効果によって社会や顧客に一四六億円のプラスを計上。
しかし、CO2削減面では二億円のマイナスだった。
同社は製造工程での自家発電システムのエネルギー源を重油から天然ガスに変えることで、CO2の削減を予定していた。
それが予定よりも遅れたことから、CO2の部分では「赤字」を計上したという。
東工取はシミュレーションの公開や、他のシンクタンクなどとの協力を模索し、「産業界や社会に「開かれた研究を行いたい」(中沢理事長)と語る。
大手商社の商品ディーラーは「一種の金融商品のように空気の値段が上下し、仲介やディーリングで利益を得られるかもしれない」と東工取の動きに興味を寄せる。
この試みは、将来の環境会計の導入や、京都議定書上の負担が各企業に求められる可能性を考慮して、先手を打って対応したものだ。
だが「予想外にいい効果があった」と同社環境部長の亀岡公高氏は語る。
CO2の排出はエネルギー消費と密接に結びつくため「検証することは、生産過程でのエネルギー効率の向上につながりました」という。
財団法人地球環境研究機関の調査では、二○○二年度の東証一部上場の中で二八○社を調査したところ三一社がCO2の排出量を金額に換算して発表した。
運輸大手の佐川急便は二○○三年五月、CO2の同社排出量を二○三年度までに、二○○二年度比で六%削減する計画を発表した。
NGOのWWF(世界自然保護基金)日本法人が協力し、第三者の観点から計画へのアドバイスを行う。
佐川急便は軽油を使うディーゼルトラックを天然ガス車に置き換えることで、CO2の削減を図る。
二○○二年度末で二○○台(自動車総数約一万九六○○台)の天然ガス自動車を三年度末には七○○○台(同約二万一○○○台)に増やす予定だ。
同社の辻尾敏明専務は「運送会社は仕事上、どうしても車の排気ガスを出さねばなりません。
不安を感じるかもしれない顧客に環境面からの安心感を与え、イメージ向上などビジネス上のメリットにつなげたいのです」と狙いを説明する。
同社はかつて日本の企業とは距離のあったNGOと提携した。
他者を交えることでCO2削減を効果的に行うことを意図したが、「NGOのよいイメージとの相乗効果も期待しています」(辻尾専務)という。
各社はCO2の削減によるイメージの向上を広報戦略で使うようになった。
コスモ石油は、海外の植林で得たCO2排出権を、ガソリンのユーザーに提供。
同社が活動に協力する登山家野口健氏の講演会でその排出権を安い価格(一トン当たり五○○円)で販売した。
「石油は使うとCO2を発生する宿命があります。
ユーザーの皆さまに安心して利用いただけるブランドの醸成を期待しています」(広報室)という。
商品の販売でも、CO2の削減を訴える例が目立つ。
石油業界最大手の新日本石油は「ENEOSヴィーゴ」というハイオクガソリンを二○○三年二月から全国で販売した。
同社の持つ技術による特殊な処理で燃費向上や硫黄分の削減を行い、既存製品よりも、排気ガスの環境負荷を減らせる製品だ。
その中で、「一般に分かりやすくするため、CO2の削減効果をセールスポイントの一つにする」(広報部)方針だ。
また自社内で京都メカニズムに類似した制度を入れる企業もある。
松下電器産業はCO2の排出権の社内取引制度を二○○三年一○月から試験的に実施した。
国内三五事業所が参加。
削減目標をあらかじめ割り振り、多く削減できた事業所が余剰分を売りに出す仕組み。
金銭のやり取りはしないが、予算上のメリットをつけるという。
こうした例を眺めると、大半の日本企業は温暖化問題に対して大変に敏感だ。
環境保護「国民はこれまで築き上げたものを守るために懸命に働いている。
大統領閣下、私たちの未来を危険にさらさないで」。
これは、米国の化石燃料業界のロビー団体であるGCC(地球気候同盟)が、一九九七年六月三一百に有力紙ウォール・ストリート・ジャーナルに出した全面広告の冒頭だ。
このときは、京都議定書に取り上げられる数値目標が国連環境特別総会で議論されていた。
広告は次のように続く。
「競争相手である中国やインド、メキシコ、ブラジルが米国に圧への企業の責任だけでなく、ビジネス上のメリットなどさまざまな思惑を持ちながら積極的な対応をしている。
京都議定書がこの動きを加速させていることは間違いないだろう。
力をかけている。
これは、米国の家族たちに石油やガソリン、電力の使用を制限させ、次は物やサービスの値段が上がる」。
これだけではない・京都会議前後には米国で規制を懸念する産業界の広告や意見が新聞やテレビに次々と登場した。
通産官僚たちは九七年当時、京都議定書について橋本龍太郎首相や堀内光雄通産大臣に説明する場合に、米国の派手な反対意見の広告を資料として紹介した。
「全世界で通産省だけが温室効果ガスの削減に消極的であるかのように思う人が多かった。
そうではないと主張したかったのです」とある同省OBは説明する。
同時に「私たちが孤立無援で主張を続けたのに、日本の経済界は援護をしてくれませんでした」と不満げだ。
ただ、米国では逆方向の宣伝も派手だ。
九八年一○月五日、有力紙ニューョーク・タイムズとワシントン・ポストに広告が掲載される。
「手をこまねいていては、事態が悪化するだけ!」。
これは環境保護団体ではなく、企業側の広告だ。
GCCに入らない石油会社ブリティッシュ・ペトロリァム・アメリカ、トョタ自動車、ロッキードなどが参加した団体、気候変動対策センターによるもので、「気候変動への取り組みを先延ばしにするほど、環境面でも経済面でも対応のコストが高くなる」と続く。
日本でもCO2の削減技術や自社の取り組みについて、各社ごとに広告などで積極的に訴える例は増えている。
ただ、地球温暖化問題での経済界からの政策提言では、賛成も反対ない。
経済界には「CO2規制社会」でのビジネス上のチャンスを期待する声が一部にはある。
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